最初に・・・明日、出発が早い方は、こんなん読まずに早く寝てください。
宜野湾最終日、まだ、付き人はチケットを入手出来ていなかった。生まれて初めて、「小田さんのチケット、お譲り下さい」の紙を持って、野外劇場へ向かう公園の小道で2時間ほど立っていたが、誰もが横目で見て、薄ら笑いを浮かべながら通り過ぎるだけであった。「もうあかんわ、行こ行こ」急かすヨメに、ただついていくしかなかった。
「せやから、チケット仲介業者のサイトで1万円で出品されてた時に買ってたら良かってんやん」・・・ここで、反論をすると倍返しになる事は長年の経験で解っている。黙ってくまモン柄のレジャーシートを公園の芝生に敷き、向かいのサンエーで買った海苔弁当を食べ始めた。明治安田生命の曲が流れ、いよいよ開演だ。急に拍手が沸き起こった。きっと小田さんが舞台に上がってきたんや。オリオンビールをグッと飲み、悔しさを紛らわした。・・・とその時、PM AGENCYのTシャツを着たニイチャンが近寄ってきた。「小田さんのファンですか?」「そうですわ、チケットが無いからここで聴こうと思てまんねん。」「もし、良ければ入場されませんか?」「え?無料(ただ)で?」「何かツアーグッズを買って頂いたらありがたいです。但し、他言は無用です。ブログなんかに載せないでください。」ヨメの目の色が変わった。「ほな、入ろ!」と言い終わらない内に入口に向かって駆け出した。食べかけの海苔弁当と、オリオンビールを持って、ヨメを追いかけた。ニイチャンは忘れていたくまモンのレジャーシートを、パタパタさせながらついてきてくれた。入場して、スタンドに入って思わず、「あっ!・・・・」場内は3分の1くらいが空席になっていた。ニイチャンが耳元でささやいた。「転売ヤーに買い占められましてん。あまりの高額で出品した為に、誰も買わず、売れ残り、投げ売りするのも癪に障ると思ったのか、売りに出さず、その結果がこの通り、3分の1が空席ですねん。今、隠密に公園にいる人に声を掛けて、空席を埋めてますんや。ツアーの千秋楽に空席があったら印象が悪いさかい・・・」ヨメは、ニイチャンの話に耳を貸さず、♪こころ♪を手拍子たたいて歌っている。誠に順応が早い。ニイチャンがささやいた。「ツアーグッズ買ってもらえまへんか?ノルマがありまんねん。ツアー最終日なんで、売れ残ったら、えらい損になりますねん。売り尽くしセールで半額にしときまっさ。」「しゃーないなあ、ま、ただで入場させてもろたんやさかい。ほな、チョコマグネットを一つ買うたるわ。」ニイチャンが持っていたくまモンのレジャーシートが、はらりと地面に落ちていった。買ったチョコマグネットを持って、ガラ空きのSブロック最前列に陣取った。横には金持ち風のご夫婦が座っていた。「この夫婦、20万円払って、ここに座ったはるねんなあ。けけけ」と思わず付き人は薄ら笑いを浮かべて、チョコマグネットを握りしめた。小田さんが「どうもありがと~!」と言った。付き人も、思わず「どうもありがと~」と心の底から叫んだ。それをご覧になられていた極楽のお釈迦様は、やさしくうなずかれたのであった。 クヮンソウの花もゆらりとうなずいたように揺れたある秋のたそがれ時であった。 お・し・ま・い
この物語はフィクションであり、登場する人物、団体などの名称はすべて架空のものです。
明日、付き人は関空最終便で出発します。実は付き人は明日から、遅い夏休みなんです。バンザ~イっ!
因みにヨメは明日もフルタイムで仕事です。かあちゃん、ファイト~っ!